• まかせて安心 行政書士事務所 | 静岡市

個人の方が、個人事業主や事業性法人等の事業性借入の連帯保証人になる場合には、借入金の契約を締結する前に、公証役場での手続きが必要です。ただし、保証人(予定)の方が個人事業主の配偶者である場合や、事業法人の役員及び議決権の過半数を有する株主等である場合、この手続きは不要になります。

債権に関するルールを規定する民法の一部改正法が、令和2年3月1日に施行されました。
この中で、保証人の取扱いについて大きな変更がされました。冒頭に書いた公証役場での手続きも、新たに変更(追加)された大きな改正部分になります。
それは、事業用資金の融資を受けようとするとき、事業と直接関わりのない第三者が個人で保証をする場合には、公証人があらかじめ保証人になろうとする人から、直接その保証意思を確認しなければ保証の効力が生じないというものです。
このため、保証人になることを予定する人は、必ず本人が公証役場に出向き、公証人が公正証書を作成することが必要になります。この公正証書のことを、「保証意思宣明公正証書」といいます。
なお、公証人が保証意思宣明公正証書を作成してから1か月以内に金銭消費貸借契約等を締結することも、有効な保証契約の要件となります。また、事業を行う法人や個人事業主の方は、第三者である個人に保証を依頼するとき、保証人を予定する方の判断のために、事業者の財産状況等の正確な情報を提供しなければならないことも、新たに主たる債務者の法定義務に加えられました。
※財産状況等の正確な情報……財産及び収支の状況、保証を予定している借入金以外の借入金の状況(残高、履行状況)、保証を予定している借入金の担保として提供する予定のある物件等の内容。

保証人となる予定の方は、次の「主たる債務の内容」を目録として明確にしておく必要があります。
1.貸主(債権者)の本店所在地と商号
2.借主(債務者)の住所と氏名
3.発生原因である契約の種別
  金銭消費貸借契約
4.借受元金 金〇〇万円
5.利息 年〇パーセント
6.遅延損害金 年〇〇パーセント
7.元金の支払期限(または元金の支払方法)
  最終期限 令和〇年〇月〇日
  ただし、令和〇年〇月から令和〇年〇月まで、毎月〇〇日限り金〇万円ずつを支払う。

その他、保証人を予定する方は、保証意思宣明公正証書の作成前に、主たる債務に関する金銭消費貸借契約書や保証契約書等、公証人から指示された資料を提出する必要があります。さらに、当然のことですが、作成手数料を支払う必要があります。作成手数料は、保証債務の金額とは関係なく、保証契約1件について原則1万1千円です。
日本公証人連合会のホームページでは、「保証意思宣明公正証書」について、"作成の具体的な手続き"や"公証人が保証予定者に確認する内容"などを公開しています。詳細を知りたい方は、インターネットでご確認ください。

このときの債権法(民法)の改正においては、複数名の債務者(連帯債務者)の債務を、連帯して保証する連帯保証人の方にも少なからず影響のある改正も行われました。
それは、複数人いる連帯債務者のうちの一人に成立した消滅時効が、他の連帯債務者の負担する債務についても消滅時効を成立させていた従来の取扱いを変更し、他の連帯債務者の負担する債務には影響を与えないとする取扱いになりました。これは、時効完成が絶対的なものから、相対的な効力に変更されたというものです。
そのほかの改正事項として、主たる債務者から頼まれて保証をした保証人は、債権者に情報提供の請求をしなければなりませんが、債務の履行状況(きちんと約定通り返済されているか否かや債務残高、すでに弁済期が到来しているもの等)を債権者に直接聞くことができるようになりました。それまでは、保証人が金融機関の守秘義務を理由として、債務の履行状況を正確に聞けなかったこともありましたが、この点が改善されました。

「事業性資金の融資」とは...
借主が借り入れた金銭等を自らの事業に用いるために負担した貸金等債務を意味します。例えば、製造業を営む株式会社が製造用の工場を建設したり、原材料を購入したりするための資金を借り入れることにより負担した貸金債務が「事業のために負担した貸金等債務」の典型例です。このほか、いわゆるアパート・ローンなども「事業のために負担した貸金等債務」に該当するものとされています。他方で、貸与型の奨学金については「事業のために負担した貸金等債務」に該当しないとされています。

保証人を頼まれたときは、その保証契約内容を充分に吟味して判断することが、とても大事です。
このようなことで、疑問点などを相談したいときは、当事務所までお気軽にご連絡ください。


PAGE TOP