• まかせて安心 行政書士事務所 | 静岡市

ある日突然、Xさん(ご相談者)の携帯電話に電話が掛かってきました。「当社は大手通信会社N社の提携会社(プロバイダーS社)の営業の者(女性)です。光回線とプロバイダをセットで乗り換えると、現在の大手通信会社よりも料金が確実に月額2000円以上安くなります。速度も変わらないし、むしろ早くなる可能性があります。」という。Xさんは、プロバイダーS社は有名で且つテレビCMでも認識があった。その点で疑うことなく、突然の電話にもかかわらず安心して会話をしてしまった。Xさんが、「いまの光回線契約のサービス内容で問題は無いし、自宅とするマンションの光回線は、N社か地元の回線業者しか選べない」と伝えると、電話相手(営業の者)は「安心してください。マンションの回線設備工事などは不要です。」と言う。

後日、プロバイダーS社の営業の者(女性)という人から電話が、再度掛かってきて、具体的な金額の試算をしたいのでという理由で、N社ホームページから「転用承諾番号」の取得を誘導。E又はWで始まる12桁の番号を教えてくれれば、具体的にお安くなる金額を試算できるとして、「転用承諾番号」を本人が理解していない状況で入手した。そして、「金額を試算した書面はご自宅に郵送しますね」と言って電話を切った。電話を受けたXさんは、まだ契約には至っていないという認識。

しかし、そのあと約1週間が経過すると、乗換先事業者(プロバイダーS社)から、契約書や約款が入った封筒が郵送された。封筒の中身を見ると、オプション契約(12種類)満載の高額な月額利用料の明細が記載されている。そもそもこの前の説明内容と違うし、このままでは、月額料金が2倍以上になるためXさんが慌てて契約書に記載された乗換先事業者の連絡先に電話したが、AIロボットが応答し、なかなかオペレータに繋がらない状況に陥った。電話で聞いた話と違うと思い、携帯電話に掛かってきた営業の電話番号に折り返し電話しても一向に繋がらなかった。自宅に契約書の封筒が来た時点で、すでに契約書に記載された契約日から7日が経過していた。これではクーリング・オフもできないと諦めつつも、当事務所に相談をすることに。

初期契約解除制度

「特定商取引法」は、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。 具体的には、訪問販売や通信販売等の消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、事業者が守るべきルールと、クーリング・オフ等の消費者を守るルール等を定めています。しかし、当事案のような「電気通信事業法の規定するサービス」は、特定商取引法の適用除外となっています。 ただし、電気通信役務提供に関する契約が訪問販売又は電話勧誘販売によって行われた場合に,特定商取引法が規定する消費者保護規定と同等の保護を与える旨の規定が設けられています。これをクーリング・オフ制度と区別して「初期契約解除制度」と呼んでいます。

電気通信事業法(書面による解除)第26条の3(より抜粋)
電気通信事業者と電気通信役務の提供に関する契約を締結した利用者は、書面を受領した日(当該電気通信役務の提供が開始された日が当該受領した日より遅いときは、当該開始された日)から起算して8日を経過するまでの間、又は当該契約の解除に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認をし、これによって当該期間を経過するまでの間にこの項の規定による当該契約の解除を行わなかつた場合には、当該利用者が、当該電気通信事業者が総務省令で定めるところによりこの項の規定による当該契約の解除を行うことができる旨を記載して交付した書面を受領した日から起算して8日を経過するまでの間)、書面により当該契約の解除を行うことができる。

今般の対応について

今般のご相談者はフレッツ光から光コラボレーションへの乗換勧誘を受け、その際、光コラボレーション事業者の代理店と名乗る人物から、月額利用料が安くなるという虚偽説明により、誘導されてしまったようです。郵送で自宅に届いた契約書に記載された「契約日」は、配達日の7日前でしたが、 電気通信事業法での「書面を受領した日(当該電気通信役務の提供が開始された日が当該受領した日より遅いときは、当該開始された日)から起算して8日を経過するまでの間」にあたるため、内容証明郵便を出状のうえ、契約の解除手続きを行いました。

なお、光コラボレーション事業者の相談窓口に対しても、今般の経緯を説明のうえ、乗換契約の執行停止を求めましたが、「転用承諾番号」を提供してしまったあとでは、社内の事務の流れを止めることは容易ではないとの説明でした。これは相談窓口がクレームを認識しても、転用手続き(回線を変える部門が別に行う)は不備なく進むので、それが正常に進んでしまったら、新たな契約に基づくサービスは始まってしまうとのことでした。

ただし、今回はコラボレーション事業者が「転用承諾番号」を得ても、転用完了前の状態であったことから、N社との光回線サービスは、まだ解約されておらず、無償で初期契約解除できたことが幸いでした。でも、少しでも封筒の中身の確認が遅れていたり、その結果、乗換契約が一旦有効に成立(転用完了)していたら、高額な契約解除料(違約金)や事務手数料まで請求されたことでしょう。いずれにしても、不明な点があったり、「転用承諾番号」を取得するよう迫られた場合は、あいまいな受け答えをせずに、いったん電話を切って勧誘を中断することが無難なように思います。

ポイント

(1)乗換事業者(コラボ事業者)の相談窓口に対して、直ちに手続きを止めるように連絡を入れる
(2)そのうえで、電気通信事業法に基づく「初期契約解除制度」の手続きを、可及的速やかに行う

ご参考:光回線の種類について

光回線の種類その概要・特徴など
フレッツ光フレッツ光は、NTT東日本・西日本が提供する光回線サービスです。全都道府県に光回線網を整備しており、幅広い地域で利用されています。
フレッツ光のサービスを利用するためには、別にプロバイダと契約しなければなりません。契約先がNTTとプロバイダの2つになり、管理が大変で、通信費も高くなりがちですが、自分の好きなプロバイダが選べるメリットもあります。
光コラボレーションNTT東日本・西日本の光回線網を借り受けて提供されている光回線サービスです。契約先はNTTとは別の事業者ですが、使用する回線はフレッツ光と同一です。主に携帯電話の通信キャリアやプロバイダが運営しており、NTTの光回線を使用しながら、それぞれが独自の特典やオプションなどを提供し、支払先はNTTとは別の事業者になります。例:ドコモ光、SoftBank光、BIGLOBE光、楽天ひかり、@nifty光など非常に多くあります。
独自回線企業が独自に光ファイバーを敷設して提供している光回線のことです。事業者が独自に光回線網を敷設しているものと、NTTが使用していない予備回線を利用しているものとに分けられます。
例:au光、NURO光など
電力系光回線電力系光回線とは、各地の電力会社により設立された電力系通信事業者が所有する回線網を利用した光回線のことです。
各電力会社が供給している電力線網を利用しているため、各電力会社の電力供給エリア限定となります。エリアが限定される一方で、他の回線事業者が提供していない場所でも、電力系光回線なら提供している場合もあるようです。例:コミュファ光、eo光など

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